研究内容

パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメントの向上を導く効果的な組織開発的アプローチの検証

研究期間2022年4月1日~2024年3月31日
※2023-2024年JSPS科研費研究課題(23KJ1686)
※2023年 産業医学調査研究助成研究課題
研究名称パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメントの向上を導くための効果的な組織開発的アプローチの検証
調査対象者一般企業の就労者
*研究協力いただける企業・事業所様を随時募集しております。
研究代表者小林百雲子


目的

本研究では、パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメント(仕事に対するポジティブで充実した状態)の向上を導くための、効果的な組織開発的介入プログラムの開発と検証を行う。管理職と一般職の共感的な態度や適切なコミュニケーションの促進を目的としたプログラムを開発し、管理職・一般職・職場全体への介入効果を検証する。


期待される成果

①理論的枠組み:パワハラの防止がワーク・エンゲイジメントを向上させる。

②介入群への介入効果:介入群の怒りの表出性が低下し,パワハラ認識性(当該の言動をパワハラであると認識する程度)と視点取得(他者の視点に立つ姿勢や共感性),ワーク・エンゲイジメントが向上する。

③介入群が所属する部署の就労者への介入効果:パワハラの体験が低下し,部署レベル資源とワーク・エンゲイジメントが向上する。パワハラの体験が無くなった群のワーク・エンゲイジメント向上効果が顕著である。


本研究の特色

パワハラとワーク・エンゲイジメント双方に働きかける効果的なプログラムの開発

ワーク・エンゲイジメント向上とパワハラ防止は、組織と就労者の双方に利点がある。対策は急務だが介入研究の蓄積は乏しい。背景にフィールド獲得の困難さがあるが、本研究では既に企業の協力が得られることが確定している。また、本研究はコミュニケーション改善を促す組織開発的アプローチを用いる点で新しく、研究の発展を導く。一つの介入プログラムで、WEとパワハラという職場や仕事に関するポジティブとネガティブ両側面への効果を実証した研究は他になく、先進的かつ極めて高い意義がある。


実用化しやすく社会的意義が高い、短期プログラムの開発と効果性の実証

本研究は、介入対象者を管理監督者もしくは一般職に限定し、1日数時間の短期的な介入方法を用いる。企業や就労者の負担が少ない介入プログラムを開発できれば、導入企業の増加や就労者のモチベーション向上につながる。

パワハラの防止対策は企業にとってはメンタルヘルス対策として位置づけられやすく、コストと捉えられがちだが、パワハラ対策が被害による悪影響を防ぐだけでなく、就労者の活力や熱意、生産性向上などのポジティブな効果を示すことができれば社会的意義やインパクトが大きい


介入プログラム

  • 管理職向けプログラム


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パワハラを防ぎ,部下の活力を引き出すリーダー術 ―部下との関係を改善し,いきいきとした職場をつくるための,組織開発プログラム―


プログラム概要
1.パワーハラスメント教育パワハラの概念、従業員の心身の健康や企業の労働生産性に及ぼす影響、パワハラ防止対策、今回の調査についての理解を促す。(講義)
2.アンガーマネジメント怒りの特徴とコントロール法の習得を目指す。(講義・個人/グループワーク)
1.怒りが起きる仕組み
2.怒りをコントロールするには
3.認知的対処・物理的対処
3.リラクセーション
  マインドフルネス
リラクセーション技法である呼吸法と呼吸に注意を向けるマインドフルネス技法の習得を目指す(講義・実習)
4.アサーションスキル相手を尊重しつつ、自分の意見や要求、感情を誠実に対等に伝えるコミュニケーションの方法であるアサーションスキルの習得を目指す。(講義・グループワーク)
1.アサーティブなコミュニケーションとは
2.状況に応じたアサーティブコミュニケーション事例
3.アサーティブのためのポイント
5.積極的傾聴部下や同僚とのコミュニケーションや相談対応、面談時に有効な積極的傾聴技法の習得を目指す。話の聴き方のコツ、基本姿勢を学ぶ。(講義・実習・グループワーク)


  • 一般職向けプログム

現在企業へ実施中のため,研究修了後に公開いたします。



*研究協力いただける企業・事業所様を随時募集しております。

*研修講師などのご依頼もお受けしております。ご相談ください。


関連する業績(R5.5時点)

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